「えっ! ルディーン君、帰っちゃうんですか?」
イーノックカウで買った僕んちの探検が終わった後、僕はお爺さん司祭様とニコラさんたちと一緒に宿屋さんに帰ったんだ。
でね、そこので夜のご飯を食べてたら、お爺さん司祭様が明日グランリルの村に帰るよってニコラさんたちに話したんだ。
「でも、なぜそんな急に」
ニコラさんたちは、僕はいつか村に帰るんだろうなぁって思ってはいたそうなんだよ?。
でも夜ご飯の時にお爺さん司祭様から明日買えるよなんて聞かされたもんだから、びっくりしたみたいなんだ。
「いやいや、急に帰る事になったのではない。これは元から決まっておった事でな」
「そうだよ。ニコラさんたちがお引越しする日に帰るよって、僕も聞いてたもん」
ニコラさんたちは、僕んちの工事が終わったらそっちにお引越しする事になってたでしょ?
その工事が終わって、今日僕んちがちゃんと出来上がってるのをみんなで見て回ったから明日この宿屋さんを出て引っ越す事になってるんだ。
「ニコラさんたちが僕んちに引っ越したら、僕たちもこの宿屋さんにいなくっても良くなるでしょ? だから明日帰るんだよ」
「そっか。言われてみれば、確かにそうよね」
僕がずっとここにいたのは、ニコラさんたちが泊まるためのお金を払わなきゃダメだからだもん。
そのニコラさんたちがお引越しするんだから、僕がこの宿屋さんにいる意味、無いよね?
だからそれを聞いたニコラさんは、しょんぼりしながらもそうだねって一度は頷いたんだよ。
でもね、ユリアナさんが何かに気が付いたようなお顔になってこう聞いてきたんだ。
「あっ! でもルディーン君。洗濯物を乾かす魔道具を完成させる研究をしないといけないみたいなこと言ってたじゃない」
「そうよ、あれはどうするの?」
でね、それにのっかるようにアマリアさんがどうするの? って。
でもね、そのお返事は僕じゃなくって、お爺さん司祭様がしたんだよ。
「あの乾燥機は一番適しておる魔石の大きさが解っておらぬだけで、魔道具としてはすでに完成しておるのだ」
お爺さん司祭様の言う通り、思ったよりもあっつい風が出てこなかったから魔石の大きさを変えようってお話になっただけで、中に入れた洗濯物自体はちゃんと乾いたでしょ?
だからもっと短い時間で乾かすのにはそれくらいの大きさの魔石を使ったらいいのか調べなきゃダメだけど、乾燥機としては完成してるんだよね。
「そしてその実証実験も、ヴァルト一人でも可能だ」
「そうだよね。だってロルフさん、火の魔石を作れるって言ってたもん」
これが氷の魔石だったら僕がいないと困っちゃうかもしれないけど、火の魔石は魔法が使える人だったら誰でも使えるちっちゃな火をつける魔法、イグナイトを覚えれば作れるようになるもん。
だから乾燥機の実験は、お爺さん司祭様の言う通り、僕がいなくってもできるんだよね。
「それに本来帰宅する予定だった日から、かなりの時が立っておるからのぉ。いい加減返してやらねば、親御さんも心配しておるだろうからな」
「それって、私たちのせいですよね?」
「せいとまでは言わぬが、本来の目的自体はすでに達成しておるからのぉ」
僕とお爺さん司祭様はイーノックカウに来たのて、ベニオウの実を使ったらお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションが作れるかもしれないって解ったからでしょ?
そのふたつとも、僕が作ったのよりは効果が弱いけどちゃんとできたもん。
だからほんとだったら、その次の日にはグランリルの村に帰ってたはずなんだよね。
「しかし、滞在日数を伸ばしたおかげでいろいろと新たな発見があったようだからな、まったく無駄な時間であったと言う訳ではないから、責任を感じる必要はないぞ」
ニコラさんたちはね、自分たちのせいで僕が帰れなかったってちょっぴりしょぼんってしちゃったんだよ?
だからお爺さん司祭様は、イーノックカウにいたから作れたものもいっぱいあるんだから大丈夫だよって。
確かに魔道乾燥機はそのまんまお家に帰ってたら作らなかっただろうし、魔道ボイラーのお話や井戸からお水を汲み上げる魔道具のお話だってお家を買ってなかったら多分聞いてなかったもん。
それにね、お料理とかもここにいる時間が長かったから新しいものが食べれたんだよってお爺さん司祭様は笑うんだ。
「確かスフレオムレツという名前だったか。あのようなものは、わしも初めて食べたな」
お爺さん司祭様はね、ノートンさんにメレンゲの作り方を教えてあげた時に作たふわふわのオムレツの事をすっごく帰任ったんだって。
そう言えばメレンゲクッキーやケーキも、あれとおんなじで僕んちに入れた魔道コンロや魔道オーブンがちゃんと使えるかどうか実験する時に初めて作ったんだっけ。
って事は、あれもニコラさんたちに会ってなかったら、もしかしたら作ってなかったかも。
「ニコラさんたちに会ってからちょっとしか経ってないのに、何か一杯やってるね」
「私たちもルディーン君に会ってから、短い間に色々あったわよ」
「ちゃんとした武器の使い方を教えてもらったり」
「ストールさんにしごかれたり」
「何より、ルディーン君が通りかかって無かったら、私たち多分生きてなかったと思うしね」
そんな話してたらなんかね、みんなしょんぼりしちゃったんだよ。
でもそんな僕たちに、お爺さん司祭様は言うんだ。
「別れるのがつらいという雰囲気のところ悪いのだが、ルディーン君はまたすぐにイーノックカウを訪れる事になっておるのだ」
「えっ、そうなの?」
それは僕も知らなかったもんだから、僕はびっくりしてほんと? って聞いたんだよ。
そしたらお爺さん司祭様は困ったようなお顔で、笑いながら忘れちゃダメでしょって。
「居住権は一人が取得すれば家族全体に共有されるから、近いうちにそろってイーノックカウまで来て欲しいとヴァルトたちから言われておったではないか」
「あっ、そっか! 冒険者ギルドのカードに書かないとダメだから、みんなで来てねって言われてたっけ」
って事はさ、今はお別れでもまたすぐに会えるって事だもん。
ちょっとの間のお別れだったら全然寂しくなんかないから、僕はすぐに笑顔になったんだ。
そしてそれはニコラさんたちもおんなじだったみたいで、さっきはあんなにしょんぼりしてたのに、今はみんなニコニコ。
「あっ! って事は、ルディーン君に戦い方を教えたっていうご両親にも会えるって事よね」
「それはすごく楽しみかも!」
その後は僕のお父さんやお母さん、それにお兄ちゃんやお姉ちゃんたちのお話をしながらみんなで楽しく夜ご飯を食べたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
家が完成してルディーン君がこの街に居続ける必要がなくなったという事で、グランリルの村へ帰る事となりました。
なんか予想よりもはるかに長い間続いてしまいましたが、次回でとりあえずイーノック編は終わりです。
まぁ本編中でも語られている通り、またすぐに来ることになるんですけどね。
とは言っても、村には村のキャラたちがいますから、そのエピソード次第ではかなり先になってしまうかもしれませんが。